vol.07
2021.4.24

【前編:Workshop】『次の東京のあるべき姿』

世紀の東京大改造の進行を背景に、それらの全体像や個々の開発事業を横断した共有と共創の場として都市開発に関わるディベロッパーとクリエイターにより2019年から始まった「202X URBAN VISIONARY」。ついに7回目となる2021年04月、渋谷キャストの開業4周年祭に合わせて渋谷キャスト内のスペースにて、今回初めてとなるワークショップ&トークセッション形式での開催となりました。次の東京のあるべき姿を探るワークショップを登壇関係者のみの非公開で行い、その熱量冷めやらぬまま、直後に一般公開型のオンライントークセッションを実施しました。
前編ではワークショップの様子をお伝えします。

【ファシリテーター】
齋藤精一(パノラマティクス主宰)【司会進行】
後藤太一(リージョンワークス合同会社 代表社員)
山本恵久(日経クロステック/日経アーキテクチュア 編集委員)
田中陽明(春蒔プロジェクト株式会社 代表/co-lab運営代表)

【参加企業】
三井不動産株式会社
三菱地所株式会社
森ビル株式会社
東日本旅客鉄道株式会社
東急株式会社


まずは事務局を務めている春プロジェクトの田中陽明氏から、挨拶と「202X URBAN VISIONARY」の趣旨説明がなされました。

田中:「URBAN VISIONARY」という企画は、ビジョナリーをみんなで語ろう、ということから始まり、いよいよ「ビジョナリーからアクションに向かいたい」ということで、今回ワークショップ形式を取らせていただきました。

齋藤:「URBAN VISIONARY」は、日経BPの山本さんが毎年改訂しながらつくられている『東京大改造』という本を読んでいて、「なぜ各事業者がみんなバラバラの開発をするのだろう?」と不思議に思ったのがきっかけです。
「URBAN VISIONARY」は協議会のようなものではなく、各社の看板を一度下ろしてもらって、車座的な場にしたい。
今日の前半はワークショップ形式で、「これからの東京がどのようなOUTCOMEに向かうべきなのか」、その後に、「そのOUTCOMEに向けてどのようなアクティビティが必要なのか」、例えば法改正が必要なのか、もしくはデベロッパー連絡会みたいながっちりしたものが必要なのか、国交省や東京都になにかをしてもらいたいのか、どうするのかというところを考えていければと思います。

山本:『東京大改造マップ』の取材をしていると、プロジェクトで個別の違いはあるのですが、例えば同じ特区の中で違うデベロッパーが別の建物を建てたケースがあります。「なにか連携はあったのですか?」と聞くと、自治体による一定のコントロールはあるにしても「事業者間の連携はあまりなかった」ということがありました。それではもったいない、もう少しやりようがあるのではないか、と感じていました。

そして、新しいメンバーとして、リージョンワークス・後藤氏の紹介がされました。

後藤:福岡を拠点として、都市に関わるコンサルティングなどをしています。アメリカ・オレゴン州のポートランドで自治体業務をしてから、もう少し小さい都市で仕事をやりたいと思い、2003年に東京を離れて福岡に行きました。目の届く範囲での都市のマネジメントを試行錯誤するなかで、1つだけ都市の現場のモードを変えられたと思っているのですね。
ライバルの社長同士が握手をしている写真を出しますが、これは手を結んで街づくりと交通で共同事業やり始めたのですね。それはなぜかというと、1つはそれまで仮想敵がライバル会社だったのですが、実は仮想敵はソウルやシンガポールだろう、と目線を変えたことにあります。もう1つは、現場の人たちの話し合いやワークショップはたくさんしていながらも上のほうでライバル意識が強すぎたという状況が、時間が経つうちに変わってきたということです。みなさんの活動も、上の方々まで突き動かせる活動になってほしい、と思っています。

ワークショップは各チーム4名ずつ、計3チームに分けて行われました。
チーム1:文化/エリアマネジメント、チーム2:CBD(Central Business District)、チーム3:ICT/CITY_OSのチームです。

齋藤氏は、ワークショップで最終的にはLogic Modelをつくるという目標を掲げました。

齋藤:Logic Modelは英国の政府も最近使っていますが、きちんとディシジョンしていこうというものです。毎日いろいろと決まっていくなかで、各企業や行政、民間のコンサルティングの人たちは「この方向に向かう」ということが分かっていれば、最終的にロジックが通った判断ができる。情緒的な価値も必要なのですが、そこにロジックを通して判断できるようにしたいと思っています。Logic Modelは常にアップデートしていくもので、今日で完成するわけではありませんが、各社がこのビジョンに則ってサービスや開発をできるようなものをつくることができればと考えています。そして今日見つけたいのは、「北極星」のようなもの、つまり「普遍的な東京はこっちに向かうんだ」というOUTCOMEです。
そして、今回は「Theory of CHANGE」を使いたいと思います。これは、まず現状把握と現状の知識を確認し、関係構築、結果があり、最後に行動変容するということです。現状把握はポジティブとネガティブを挙げます。あとは、今ある制度に関しての法律、ルールや組織、団体や「URBAN VISIONARY」のような現状の知識と活動、関係がある人を挙げていきます。最後に、OUTCOMEを目指すために必要な行動を挙げ、「東京が目指すべき方向ってこうなんじゃないか」ということをテーブルごとにまとめていけたらと思います。

 

~ワークショップ Theory of CHANGE

各チームワークを終え、発表は、チーム3のICT/CITY_OSからスタート。

チーム3:現状把握では、ICTは目標と現実で乖離が起きているのが現実かと思います。もう少し人の気持ちを動かすような、心を躍らせるようなものがもっと出てくることが必要なのかなと思います。
また、都市はICT化が進んでいますが、地方ではまだまだ進んでいないところも多くあり、濃淡がある。
あとは、さまざまなシステムが立ち上がっているなかで、横の連携がなかなか難しかったりします。テクノロジードリブンになっていて、ユーザー目線でものごとが考えられているのか、果たしてユーザーにメリットがあるのか、というところも、現状の課題です。
次の関係構築でいうと、ICTはデベロッパーがそれぞれのシステムをつくっていたり、ゼネコンも建築と掛け合わせるかたちで建物OSみたいなものをつくっていたり、クリエイターのほうでは空間のOSをつくっていたり、最近ではPLATEAUのように国家的なものが出てきたりしています。その一方で、使う側の人の目線もしっかりと巻き込んでいく必要があるので、民間企業と人を結び付けていく必要があると思います。
OUTCOMEとして何を目指すかということでは、「スマートシティ」というと、環境への取り組みなどを大事にすることで縮こまり、あまり楽しくない世界が待っているように感じるのではないか。そうではなく、もっと人の心に訴えかけるような、ワクワクするような街を、ICTをツールとして使うことによって実現していけるといいよねと。
現実にするためのツールとして何が必要なのかと考えると、1つは一律で連携が取りやすいプラットフォームがあります。みんなが繋がりやすく、みんながデータを載せていくことができ、企業間、また企業と人、人と人が結びやすいプラットフォームが必要なのではないかと。

チーム2: CBDチームのOUTCOMEでは「東京を世界一の街にするんだ、でも何が世界一なのだろう」、と分解していくなかで挙がったのが、個性が明確で、生産性が高く、住みやすく、そして分かりやすくある街だということです。もう1つが、世界中のCBDで魅力的なところは、Live、Work、Playというのが、きちんと徒歩プラス自転車くらいの圏内で集約している街だよねという。そうしたCBDが東京の中になければいけないというのが、OUTCOMEのイメージで挙がりました。
現状ではLiveのところが圧倒的に弱い。人はたくさん住んでいて人口の密度もあって、電車でないと移動できないという課題がある、と。
Playのところでは、ナイトタイムエコノミーも含めて、楽しくないとだめだよねというところの話がありました。
知識のところで挙がったのは、今は税金にメリハリがないということがあります。
Engagementでのところは、デベロッパーさんの5人くらいが東京都の特定の部署に行ってガンガン回したら、大きく変わるのではないかと。これが、アクションでも大きかったところかなと思います。
ゴールでは、CBDが東京都として大きく見れば1つの東京ですが、小さくみればCBDがいくつかの産業ごとに際立っていて、そのCBD同士が有機的につながっている状態をつくるところがポイントかと思います。

チーム1:現況把握のいい面、メリットとしては安全・安心とか秩序ある街づくりを日本人は志していて、東京もそういうところがあることです。一方で、取組み自体は画一的になり過ぎて、けっこう抑制的なことになってしまっているのではないでしょうか。
今は特区などで容積が上がる代わりにエリマネをするのですが、どうしても収益性があまりない活動ではあり、民間が受け身でやっているようだと、エリマネをやり続ける継続性、サスティナビリティという面では課題があるという話がありました。
東京の強みというところで話したのは、カルチャーではないかということです。
現状の知識では、建物や道路を使うときは、行政による制約が大きい。
関係構築の中では、関係者としてはクリエイターやアーティストといった方々と、エリマネの活動の全容をつくるときから一緒にやったらもっと面白いものができるかもしれないという話がありました。
OUTCOMEとしては、クリエイターやアーティストを育てたり発信したりする街であること。もう1つはビジネス、サービス、人と、人のつながりまでデベロップメントしていくようなデベロッパーに変容していきたいねと。
そのための行動変容やゴールというところでは、個人個人が挑戦をして発表ができ、評価されるような場づくりがあります。

齋藤氏と後藤氏は、OUTCOMEが思いのほかバラバラになったため、一度すべて聞いてまとめようとする試みが難しいとし、キャッチコピー的な文言は見つけなくてもいいと判断。そのうえで、齋藤氏も感想を述べました。

齋藤:ヒューマンセントライズやヒューマンセントリックとも言われる、人間中心の街の話はコロナ前から出ていました。
ハブシティということでは、東京は東京だけで成長するのではなくて、ほかと一緒に成長しなければいけない。外に出ていくときに来るのが東京で、世界で1番高いアンテナが立っている、もしくは最もデータが集まっているのが東京で、外からの情報と中からの情報が通っていく道というのがハブなのかな、と思いました。

齋藤氏は、Logic Modelを30分という短時間でつくることを説明。Theory of CHANGEで出てきたOUTCOMEに対して、それに向かうべく明日から行動する指針を策定することとします。

 

~ワークショップ Logic Model ~

各チームワークを終え、発表は、チーム2のCBD(Central Business Districtからスタート。

チーム2:CBDのチームでは、OUTCOMEを見ながらACTIVITY、OUTPUTを中心に話しました。
行動は、CBDに合わせてどのような産業を育むかということで、税金のメリハリをつけましょうという話になりました。
その後に挙がったのは、いっそのことデベロッパーを銀行のように3つくらいに集約してはどうかという話です。
OUTPUTに移りますと、やはり「チーム東京」で連合体をつくるという話です。これは民の仕事か公の仕事かは抜きにして、共通のものとしてみんなが応援してくれるような、明確で少し尖ったビジョンを打ち出すというところがOUTPUTかなという話になりました。

チーム1:文化・エリマネチームでは、混沌、カオスというのが東京の1つの魅力じゃないかという話で、アンテナも高いし、いろんな情報も、人材や才能も集まってきます。カオスを維持するのも大事ではないかという話がありました。
その魅力の1つは、スクラップアンドビルドで新しくなってしまうものばかりではなくて、リノベーションでうまく残すものと、常にフレッシュにしていくもののメリハリをつくること。そのなかで、自立的な活動をする、または促すという意味で、「敷居は低く天井は高く」「求心力と遠心力」というキーワードがありました。
そうした自由な活動をする場をつくるには、用途規制の自由度や、税制でチャレンジ区画なら税金は免除してくれるといったルール化を、大きなエリマネのなかでつくったらいいのではないかと。
デベロッパーとしての反省点として全体のマインドを変えていく必要があるという話もありました。
もう1つ、ジェントリフィケーションでは、よい取り組みをしている魅力ある方々がいても、賃料に跳ね返ってしまうと、その活動を続けられなくなってしまう。そうしたことにならないように、税制とデベロッパーのマインドをうまく進めていきたい。

チーム3:ICT/CITY_OSチームではスマートソサエティとしてのハブである東京と、フォレストシティ東京という2つの軸で議論しました。主にACTIVITYとOUTPUTの議論に集中していたのですが、1つはスマートソサエティのハブという観点です。
今、いろいろな都市OSといったものが走っていますが、1つの強力なプラットフォームの仕組みが必要なのでないかというのが、ACTIVITYの1番に来ています。そのうえで、さまざまなクリエイターやデベロッパーがサービスをどんどんつくって提供していく。フォレストシティに向かっていくという観点でいうと、空地や空き家がしっかりデータベース化されることによって活用できるようにしていくのが大事なのではないか、というところを議論しました。
また、東京がハブとして簡単に出入りできる、住むことのハードルを下げる、出ていくところのハードルを下げるといった仕組みをつくっていくようなところがあると議論しています。移動という観点では、MaaSとの連携へ発展していけるプラットフォームが行政でできるといいのではないか。例えば、APIの発行を義務化することの根幹のところを行政が主導してやってくれるといい、という話をしていました。
あとは緑化のインセンティブということで、街路樹の発想を大きく変えて、そこを有効に緑化していく観点であるとか、個人の相続でもめて空き家になっている場所が緑化することによって、固定資産税などの減免が受けられるといったインセンティブができるといいねという話をしています。
OUTPUTとしては、これらの仕組みによってまず身近のところに結果を出していかなければいけないのではないかということで、緑化や空地利用のインセンティブが明確化されることが大事だという会話をしています。

齋藤氏は、ACTIVITYとしてどのようなことをしていけばいいのかを、ラディカルに発言することを促しました。

齋藤:各チームから出てきたLogic Modelは、一気にまとまったという感じはしたのですが、同じような内容が多いと思いました。始める前は、Theory of CHANGEのOUTCOMEで共通項が多く、Logic Modelはバラつくと思っていたのですが、Logic Modelに同じうねりがあったと思います。

後藤:みなさん民間人材を行政に入れると言っていましたが、民間の考え方もけっこう固定化されています。行政のほうから「これをやってほしい」と最初に言ってくれるな、というスタンスなのですね。そこで、何かをしようというときに、民間だけでもデータをつくり始めるという話があります。ステップを細かくすれば、どこかで行政が入って来ても矛盾なく進められるのではないかと思って聞いていました。

山本:公民連携分野の取材をしていると、公共と民間では、個々の職員や社員のインセンティブが明らかに違うという食い違いがあることに気付きます。
それが東京でどうできるのか、民間の知恵がどう行政に入っていくのか、いやそもそも民間登用するのかということもあると思うのですが、メカニズムとして特に行政の方の持つモチベーションみたいなものがうまく作動する仕組みができると、少し事態が進むものもあるのではないかと感じています。

そして齋藤氏は、クロストークへと誘導した。

 

~フリーディスカッション Discussion~

チーム2:私は世界中あちこちに行って、日本と違うところを見てなぜかと思いながら歩いています。まず、日本ではデベロッパーの数が多すぎる。
あとはヨーロッパに行ったときに思うのは、市役所の人が一番偉いと自分たちは思っているし、市民もみんな思っているんです。

齋藤:スペインでは、建築学科を卒業したらまず市役所に就職して、そこから90%は独立して個人の建築家になる。みんな市役所を通っているんですね。そうした制度の提案もあると思います。

チーム3:デベロッパーはリアルの場所でものをつくってきて、リアル価値のようなものを捨てきれないということがあります。そこにICTが入ってきて、どう活用しようかと考えているフェーズだと思っています。

齋藤:プラットフォームの話がとても大事で、基盤をつくれ、規制緩和しろといっても、OUTCOMEで何をしたいのかは出てこないのですよね。出てくるのは、MaaSの連携とか、教育基盤とか、リモート医療とか、バズワードで。
でも今日みなさんから出てきたのは、みんなでデータを出し合おうというプラットフォームの話があったと思います。データ自体はたぶんみなさんのほうがお持ちだと思います。もちろん行政も持っているし。出すのは、もう合意なのではないかなと思います。

チーム3:個々の企業が街づくりを続けてきた一方で、データやノウハウを共有していき、みんなでいい街づくりをしていくことはもう必要な時代だとは思います。あとは、経済性とどのように両立させるか。

齋藤:共通基盤にデータを出すようなことは、社内的なハードルはありますか?

チーム1:エリマネ観点だと、たぶんいくつかデータで重要なものがあると思います。例えば、エリアの賑わいを可視化しようと考えたときに、一社だけでエリアの賑わいを出せるかといったら出しきれないと思うので、他のデベロッパーさんに頼んでデータを出してもらうことが出てきます。

チーム1:出せるものは、出していますね。むしろ今はグリーンインフラの観点で、単に気象とか地表近くの温度がどうなのかということに加えて、滞在状況、歩くスピードが速いか、普通に比べてどれだけゆっくりになるか、どれだけその空間にその人がゆっくり歩いた結果どれだけの時間いるとか、そういうところもセンサーを使って計測もし始めています。

スマートフォンの行動データなどで、コロナ禍で人通りがどうなったかというニュースがありますが、そうしたマスのデータと、ミクロに人の行動を捉えて両方の面でうまくやっていけるようにプラットフォーム化できたら、いいことが起きるのではないかと思います。

後藤:ビジネスの話と都市の話がつながってないことが問題になると思います。例えば、ビルごとにテナントの会社の価値がどれだけ上がったかというのは、一般的なリサーチである程度示せると思います。
なぜこれを言っているかというと、ビルのパフォーマンスが客観視できるデータが出てこないと、いつまでたっても工学部の都市計画の域を出られないのではないかと思っているからです。

チーム1:人の行動を分析するデータは、オープンデータ化すべきだと思っています。もっとオープンデータ化、オープンソース化すればいろんな事業に活用していただけるのかなと思います。

齋藤:GAFAも、なぜあそこまで巨大になったかというと、超APIで、目先で稼ごうと思っていないからです。nをものすごく大きくしてから後で広告モデルなどで稼ごうと思っているからですよね。

チーム1:企業によっては、保守的なところもあります。特にデータを出せって言われたら、まず間違いなく脇が閉まると思うのですね。でもその一方で、乗り遅れないようにしようというところがあったりします。自分の情報を出すことで価値を認められて、オープンソースとオープンイノベーションみたいなものが見えてくると、急に「こっちも出さなくては」となる気もします。

齋藤:今のデータの話では、アカウンタビリティをどこがもつかというと、国がつくるのはたぶん無理だと思います。僕は、民間連合みたいなことでないと、できないのかなと思っていて。そうするためには、みんなでシンクタンク、ドゥタンクをつくるのか、各社でお金を出し合う、もしくは経済と連携していくしたないと思っているのですが、いかがでしょう。

チーム2:宝の山と宝の持ち腐れで、同じ宝のことを言っている場合があります。業界自体を上げていこうとするとき、別にファーストペンギンの話ではない気がするので、みんなで出す共通なものを1つつくる必要があるかなと感じました。そのとき、会社やビジネスとしての多目的でやっていこうとすると、変なことを守ったり、変なところで刈り取ろうとしたりする気がするので、そこの部分はある意味中立地帯の要素として出せる仕組みが必要かなと思います。

後藤:寄付講座は、各社がいろんな大学などにつくりますよね。そうした、みんなが集まっているところで、アカデミックのフィルターを通してやってみると。建築や不動産などの学科横断の寄付講座を仕掛けられないかなと思いました。

齋藤:デンマークやオランダのアムステルダム、あとは中国の杭州などは、産学連携をかなりしています。そして成功して先に進むのは、経済の話とスマートの話が両輪で回っている大学が多いのです。

チーム2:産学連携はまだ会社の上層部だけで、現場の担当ベースで行っているイメージはありません。一部の人が知っていることが浸透していない、プロジェクトに落ちていかないということもあるのではないかと思います。

チーム2:デベロッパー各社入るときにどういうふうにやるのかは難しいですが、現在進んでいる再開発プロジェクトでは、大学の医学部とウェルネスや働き方も含めて研究領域と実装ということで組むこともあります。ただ、もう少し広げると、大きなビッグデータはないこともあります。連携するともう少し動きや行動などと紐付けられると自分たちにも帰ってくるし、面白いと思いました。

チーム3:後から参加していく企業はデータ自体もどう扱っていいか分からないし、プラットフォームという観点では、何をどう使ってサービスを考えたらいいのかというところから戸惑いがあると思います。そうした企業は、「ここに乗っておけば大丈夫」という強力なプラットフォームがあれば、やりやすいはずです。また、民間企業が連合する場合には、全員が合意しないと何も進まず、サービス開発も進まないというジレンマがあります。そうした意味では、デベロッパー各社はプラットフォームそのもののビジネスというより、その上に載るサービスでマネタイズを考えられているので、そこにあまり労力や思考を割かなくていいのではないかという観点で、強力なプラットフォームが提供される世界が来るといいなと思いました。

チーム3:実験的にはさまざまな人流のデータ収集がされていますが、恒常的に蓄積しているものはあまりなかったりするのですね。もう少し首を突っ込んで情報を収集してデータベース化して、ビジネスにしていけないかということを考えています。

グラフィックレコーディング:松本花澄(グラフィックカタリスト・ビオトープ)

齋藤氏は前半の最後に、ワークショップを開催したことの意義を強調。「アクションについて、みなさんもスイッチを持つことができたのではないかと思います。この活動は、引き続き行うことができればと思っています」とし、まずは後半へと議論を持ち越して続けることとしました。

▶▶後編のTalk Sessionへと続く

Photo : Chihoko Ishii
Text:Akiko Toyoda, Jun Kato